民主主義のロジック(その2)

民主主義には、政策におけるトレードオフを明示する➡政策の数値化された目標を提示する➡目標が達成されたかどうか、費用対効果があったかどうかを示すデータを公開する➡そのデータに基づいた検証が行われる・・・といった政策のロジックが必要だという話をしました(民主主義のロジックその1)。今回は、デジタル民主主義につながる重要な要素である、「政府データの公開の問題」をとりあげます。

【このブログの骨子】

  • 米国や欧州を中心に2000年代から政府や企業の持つ情報のオープンデータ化が進んだ。一般の人々が自由にデータを活用できるようにして、課題解決や新しいビジネスの創出などに役立てる狙いがある。
  • 日本も2012年から取り組みが本格化したが、全体の2割強の約5600件にアクセスできないデータが含まれることがわかった。
  • 政府も自治体も組織にデータをマネジメントする意識が根付いていない上に、オープンデータを扱える人材が決定的に不足する。
  • 日本のDXは、「このままでは世界に取り残される」という危機意識に突き動かされているだけで、Xが社会の変革にとって何故必要なのかという、「魂」に関する意識が薄く、議論も行われていない
  • DXの「魂」は、デジタルの力によって「政府の意思決定に可能な限り国民自らが参加することで、政策の信頼性と国民の自律性(自己責任)を高めるという、真の民主主義の姿を実現すること」にある

政府オープンデータ「開店休業」、2割にアクセス不備

2022年3月20日 2:00 [有料会員限定]

オープンデータ

誰でも自由に利用できる公開データのこと。総務省は複製や加工による二次利用が可能で、無償公開されているといった一定の条件を満たしたものをオープンデータとする。一般の人々が自由にデータを活用できるようにして、課題解決や新しいビジネスの創出などに役立てる狙いがある。米国や欧州を中心に2000年代から政府や企業の持つ情報のオープンデータ化が進んだ。

日本では2012年に「電子行政オープンデータ戦略」を掲げてから取り組みが本格化した。政府のオープンデータサイトは人口や気象など各省庁のデータを横断的にまとめている。2018年までにすべての都道府県がオープンデータの公開を始め、市区町村でも1000を超える自治体がデータを公開している。


政府が省庁のオープンデータをまとめる「DATA.GO.JP」。財政や国土、教育、家計など約2万8千件のデータに1カ所からアクセスできるのが売りだ。

ところが日本経済新聞社が調べたところ、2月末時点で全体の2割強の約5600件にアクセスできないデータが含まれることがわかった。厚生労働省で約45%、公正取引委員会は約38%、経済産業省は約33%にのぼる。なぜこのような問題が起こるのか。

  • 第一はデータ管理の問題だ。省庁がデータの削除やリンク先URLの変更をした場合、システムに反映せず放置するとアクセス不能が生じる。民間エンジニアは「オープンデータを使ってアプリを作ると手動のメンテナンスが必要。実用的でない」と話す。
  • 管理面だけでなく、データに向き合う行政の姿勢を問う声もある。従来なら知られることがなかったデータの分析を通して不正や課題を追及されることを懸念し「データを公開してもメリットはない」と後ろ向きに構える職員もいる。データ公開の仕方にそんな意識の一端が表れる。
  • 海外はデータをプログラムが自動処理しやすいXMLやCSV、JSONといった、コンピューターによる機械判読が可能で大量のデータを高速処理しやすい形式で公開するところが多い。一方、日本ではPDFなど自動処理に適さないデータが9割を超える。

組織にデータをマネジメントする意識が根付いていない。内閣官房によると地方自治体の約4割はオープンデータを扱う職員すらいない。首都圏の市幹部は「データの必要性を理解してもらえず予算がつかない」とこぼす。

海外ではオープンデータを活用した成功例が増える。米スタートアップのシンデステは米海洋大気局の気象情報など20以上のデータを利用し、洪水リスクを推定する事業を伸ばす。世界で4千万回以上ダウンロードされた健康管理アプリ「ルーズイット!」は米農務省の食品カロリーのデータを使い肥満防止を促す。

スペインのバルセロナ市は車両の通行制限エリアを設ける際に反対が相次ぐと、交通量や環境のデータを公開。検証しやすくし合意を取り付けた。欧州連合(EU)はオープンデータが生む経済価値が25年に最大3342億ユーロ(44兆円)に達すると予測する。


日本のDX(デジタルトランスフォーメーション)は、政府にしろ自治体にしろ企業にしろ、「このままでは世界に取り残される」という危機意識はあるものの、DXが社会の変革にとって何故必要なのかという、「魂」に関する意識が薄く、議論も行われていないような気がします。ですので、オープンデータ制度を作っても、デジタル庁を作っても、結局、「仏作って魂入れず」の結果になっているのだと思います。

次の記事は、そうしたDXの「魂」についてヒントを与えてくれます。

情報の「透明化」はDXを推進する基盤となる (台湾のIT大臣オードリー・タンさんに聞く)

2021年05月31日 ITmedia

(中略)

 上述した「vTaiwan」と「Join」では、いずれも会議の様子がWeb上で中継されるとともに、話された内容は一字一句漏らさず記録され、公開される。とことん情報が透明化されているのだ。これもまた、オードリー氏の強い信念に基づいているという。

 「彼女はIT大臣に就任して以来、オフィシャルのアカウントに届くメールの内容とその返信を、プライバシーに配慮したうえで、すべてWeb上で公開しています。自分が受けたインタビューを一字一句残さず記録したものも同様に公開されている。彼女は、政府が何かを決定するまでのプロセスを社会に提示することが重要だと語っています

こういった情報の透明化には、2つの側面がある。一つは、まさにデジタル化の恩恵である「効率性」だ。オードリー氏には数えきれないほどの相談や意見が届くそうだが、その中には似通った内容も多いとのこと。メールやインタビューの内容を漏れなく公開することで、似たような質問に回答する手間をなくしているのだ。

 もう一つは、デジタル民主主義を推進する基盤ともいえる「信頼性」

「説明責任が果たされ、情報が公開され、プロセスが透明になれば、国民はおのずと政府を信頼するようになります。国民が政府を信頼し、政府もまた国民を信頼したからこそ、他国より強権的ともいえる厳しいコロナ政策が効果的に働き、台湾は封じ込めに成功できたのです」

 デジタルを活用し、希望を持てる未来に変えていくには、高度なITスキルだけでは不十分。『多様性』や『透明性』といったデジタル革命の本質となる思考を取り入れることが先決だ」と早川氏は指摘する。


上の記事は長文だったため、だいぶ端折ったので分かりにくいかも知れません。ようするにDXの「魂」は、デジタルの力によって「政府の意思決定に可能な限り国民自らが参加することで、政策の信頼性と国民の自律性(自己責任)を高め、真の民主主義の姿を実現すること」にあるのです。

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