働きがいとは(その2)

会社における社員の「働きがい」を向上させるためには、彼らの能力開発が重要だということを、前回のブログで指摘しました。そこで、今回は、少し古い記事ですが、最近流行語になっている「リスキリング」(学び直し=能力の再開発)について考えてみましょう。

【このブログの骨子】

  • 日本で社員に「リスキリング」を実施している企業は33%、米国企業の82%に大きく劣る。
  • しかも実施しているのは専門人材の育成であって、社員全員の能力の底上げを実施している企業は10%に満たない。
  • 社員個人の自己啓発意欲もアジアの中でさえ、際立って低い
  • 背景には、個人のスキルと昇進・昇給が連動していない日本型雇用があり、社員は自分のキャリア形成に対する自主性が無い。

◯「リスキリング格差」に懸念 企業も個人も出遅れ鮮明

2021年12月9日 5:00 [有料会員限定]

デジタル人材を育てるためのリスキリング(学び直し)が注目されている。ただ各種調査を見ると、海外に比べて企業も個人も動きが鈍い。学びの格差が広がらないか心配だ。

情報処理推進機構(IPA)が今年夏に実施した調査で、リスキリングに対する日米企業の意識の差が鮮明になった。学び直しを実施する米国企業は82.1%だったのに対し、日本企業は33%にとどまった。「実施していないし検討もしていない」という日本企業は46.9%にのぼる。

リスキリングの対象者についても違いがある。米国企業は「全社員」が最も多いが、日本企業は「会社選抜などによる特定社員向け」が大半だ。デジタル化ですべての業務が変わっていくなか、多くの働き手が学び直す必要がある。日本は人工知能(AI)など専門人材の育成がまだ中心で、幅広い社員の再教育は遅れている。

「お株」を奪われた日本

日本企業の社員への教育投資も伸び悩む。厚生労働省の能力開発基本調査によると、2020年度のOFF-JT(職場外訓練)の費用は従業員1人当たり7000円。新型コロナウイルス禍の影響もあって前年度から約6割減った。08年度が2万5000円だったが、それ以降はほぼ一貫して2万円を割り込んでいる。

アマゾン・ドット・コムが19年に合計7億ドル(約800億円)を投じる方針を打ち出すなど、米国企業は従業員向けの教育投資で競い合う。日本企業はかつて職場内訓練(OJT)を強みに社員教育が充実していたが、お株を奪われた印象だ。

リスキリングの着手では日本は米国に数年遅れている。デジタル化に伴う経営変革には社員のスキル転換が不可欠であることを経営層は再認識すべきだろう。

意欲の低さ、アジアで際立つ

企業の姿勢以上に心配なのは働く個人の学ぶ意欲だ。

パーソル総合研究所が19年にアジア太平洋14カ国・地域で実施した調査によると、自己啓発について日本人の46.3%が「とくに何も行っていない」と答えた中国(6.3%)、韓国(12.3%)、タイ(5.7%)などと比べて際立っており、全地域の中で最も比率が高かった。「通信教育・eラーニング」をしている日本人は7.7%、「読書」も27.4%にとどまり、いずれも全地域の中で最低だ。

何を学べばよいか分からない人も多いようだ。リクルートの17年調査によると、身につけるべきスキルが分かっている社会人は26.9%しかいない。リクルートワークス研究所の辰巳哲子主任研究員は働き手がキャリア形成を企業に預けているからではないか」と指摘する。

日本型雇用では年齢が上がるにつれて経験やスキルも高まるという想定で社員を処遇してきた。ローテーションで職務が変わるケースが多く、求められるスキルはまちまちで、しかも曖昧だ。職務内容が明確な「ジョブ型雇用」に比べ、学びへのモチベーションが高まりにくい。


他のブログ記事でも指摘しましたが、日本の「失われた30年」は、ある意味で経営者にとっても社員にとっても、平和で平穏な時代だったのかも知れません。自分の「居場所」を守ってさえいれば良かったのですから。改革や挑戦が必要なかったのですから。必要性に気がついていなかった、あるいは気がつかないふりをしていた(?)のかも知れません(国の借金を気にせず予算をばらまいて票を買ってきた政治の姿にだぶりますね)。リスキリングやジョブ型経営という言葉が流行していますが、それも大企業の間でだけで、日本企業の99%を占める中小企業の経営者と社員には、「他人事」ではないでしょうか。学ぶことは本来楽しいことで、趣味の世界では日本人ほど学びに熱心な国民はいません。働きの世界での学びの呼び水は、無期雇用をなくすこと、副業・転職が当たり前になることだと思います。(K)

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