大学は、日本育ちの外国人に狭き門(その2)
前回は、日本で暮らす「家族滞在」の在留資格の外国人の子供たちには、日本大学への進学が非常に狭き門になっていて、日本語能力が十分でない子供たちへの特別枠を設けている大学は、国立大学では宇都宮大1校だけだと述べました。ちなみに私立大学も桃山学院教育大や大阪女学院大など一部だそうです。日本の教育制度は、明治以来「日本人の為の教育」であり、その教育観は100年経っても変わっていないということですね。
【このブログの骨子】
- 多文化共生の取り組みを国際比較した「移民統合政策指数(MIPEX)」の「高等教育へのアクセス」の項目で、日本は初参加した2010年以来「0点」が続いている。
- 教員向けの異文化教育といった「学校のダイバーシティー(多様性)」の項目も0点。
- 海外では移民に対する進学支援策を設けている例が多い。
- 政府の「グローバル人材の育成」で中心となっているのは海外で活躍できる日本人の育成であり、外国にルーツを持つ人々の才能を引き出そうとの視点がない。
〇遠い「0点」脱却 海外出身者の大学進学支援、動き鈍く
2021年8月27日 [有料会員限定]
多文化共生の取り組みを国際比較した「移民統合政策指数(MIPEX)」において、日本は外国人生徒の大学進学や入学後の支援策を問う「高等教育へのアクセス」の項目で、初参加した2010年以来「0点」が続いている。
MIPEXは近藤教授をはじめ、米欧やアジア、オセアニアなど52カ国の研究者が「労働市場」「保健」など8政策分野について採点する。
最新の20年版で日本の総合成績は34位。教育への評価が全体を押し下げており、10年来の0点は教員向けの異文化教育といった「学校のダイバーシティー(多様性)」の項目も同様だった。
近藤教授は「外国人の多く住む地域では日本語授業などの取り組みが広がってきたが、国全体で見れば『教育の対象は国民』という考え方が根強い」と指摘する。
海外では移民に対する進学支援策を設けている例も多い。
MIPEXの報告書などによると、オーストラリアの一部地域には非英語圏からの移民や難民の生徒に加点するなど、入学選考で特別な配慮をする仕組みがある。フィンランドは大学進学を目指す難民の若者らを対象にしたフィンランド語の学習プログラムを組む。
日本では1990年代以降に外国人労働者が増加し、本国から家族を呼び寄せるケースも増えたが、進学面をサポートしようとの意識は希薄だった。
政府がうたう「グローバル人材の育成」で中心となっているのは英語力強化や留学促進など、海外で活躍できる日本人の育成。外国にルーツを持つ人々の才能を引き出そうとの視点は十分ではなかったと言わざるを得ない。
東大や早慶など一部の大学では、最近授業を英語で行うケースも出てきているようですが、これも記事にある「海外で活躍できる日本人の育成」ということが主眼になっています。そもそも留学する日本人大学生は2018年からの減少に転じているのですから、何をかいわんやです(就職に不利だから)。日本の大学にダイバシティが無いのは、大学の統治機構である教授会に外国人がほとんどいない(国公立大学全体の教授に占める外国人の割合は、1995年で14%。しかも日本人と違って任期制)という事実が端的に表しています。株式を公開していない、社外取締役のいない株式会社のようなもので、大学経営に全く競争原理が働いていないのです。私は、外国にルーツを持つ人たちの才能を伸ばす大学入試の改革は、教授会の改革(私立も含めて補助金の条件とするなど)無しには、ありえないと考えます。おそらく「移民政策」の改革より難しいでしょうが。(K)