人口減を考える視点(その1)
2021年の日本の人口の減少率が過去最大となったというニュースは、文字通り世界をかけめぐりました。イーロン・マスク氏の「日本は存在しなくなる」というTwitter発言は多くの人々にショッキングだったと思われます。一方、政府はこの30年間にわたって様々な「少子化対策」を行ってきたのですが、全く効果が出ていません。人口が減ると何が問題なのか、何故出生率が減少するのか、何故対策は効果を生まないのか、どうすればいいのか・・・論点があまりにも多いので、今回、それを整理したいと思います。
その前に、日本の人口減に関する事実をまとめておきましょう。
総人口対前年(20年10月)減少数 | 減少率 | 生産年齢人口(15~64歳)減少数 | 総人口に占める割合 |
▲64万4000人 | 0.51%(過去最大) | ▲58万4000人 | 59.4%(過去最低) |
65歳以上の高齢者の人口比 | 出生数 | 死亡数 | 若い世代の結婚件数 |
28.9%(過去最高) | 84万2900人(戦後最低) | 145万2300人(戦後最多) | 51万4200組(戦後最低) |
今後の議論では、中でも出生率の問題が焦点となるので、そのグラフを事前に紹介しておきます。
少子化が更に加速しており、2022年には出生数が80万人割れとなっても不思議ではない確率が高まっています。国立社会保障・人口問題研究所の中位推計によると、出生数が80万人割れとなるのは2033年としており、2022年に出生数が80万人割れとなれば、政府の想定よりも11年も速いスピードで少子化が進行していることを意味しますね。なお、筆者が独自の簡易推計を行ったところ、出生数が50万人を割るのは、現在から約30年後の2052年となりました。政府は出生数が50万人を割るのは2072年と推計しており、筆者の独自推計による2052年は、政府の想定よりも20年も前倒しとなる可能性を意味します。(法政大学経済学部 石黒教授 日経2022.6.30より抜粋。グラフも)
それでは人口減を考える上での論点を整理しましょう。
人口減社会の論点整理
人口減に関する疑問 | 答えの骨子 |
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❶ 人口減はどのような問題をもたらすか? | (生産年齢)人口の減少と高齢化は福祉負担増&税収減をもたらし、国・地方財政がひっ迫する ➡福祉財政は破綻し人々は益々貯蓄するようになる ➡貯蓄は投資に向かわず生産性は伸び悩み、成長鈍化と消費低迷の悪循環に陥る |
❷ (合計特殊)出生率が下がるのはなぜか? | 〇 婚姻数が減ったから(戦後最低。上の表)⇐〇 そもそも結婚意欲が低下している❸ 〇 出産適齢期の女性の人口が減ったから 〇 子供を持たない夫婦が増えたから⇐〇 共働きが増える一方、家事育児負担が女性に偏っている(性別役割意識の固定化)+出産を結婚前提とする固定観念及び社会制度 |
❸ 若者が結婚しなくなったのはなぜか? | 〇 賃金が増えない(特に若年層、女性に非正規雇用が多いことも影響) △ 生活費の高い東京への一極集中 △ 若者の生活スタイルが変わり「独り身」に不自由を感じなくなった |
❹ 少子化対策に効果がないのはなぜか? | 〇 婚姻を促す若年層への経済支援が不足 △子供に無関心な社会?(社会で、地域で子供を育てるという意識が希薄=マタハラ、ベビーカーや保育園騒音クレーマー |
人口減をめぐる主な論点は、ざっと上のようになると思います。すべての論点を万遍なく掘り下げることは、ブログの目的ではありません。私たちが常日頃から頭に入れて、1人1人の行動として実行が可能なことについて、的を絞って次回以降のブログで検討したいと思います。(K)
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