移民について考える(その2)共生社会への高い壁①

日本における外国人の社会的統合は進んでいるといっても、日本で生活をすることを望んできた外国人とその家族達の前には、いくつもの高い壁が立ちはだかっています。結論から先にいttしまえば、全ての原因は、日本人が彼らを依然として「ガイジン」としか考えていないこと。さらに言えば、「ガイジン」は白人だけであって、それ以外の肌の色を持つ外国人は、単なる労働力か、さっさと稼いでさっさと母国に帰って欲しいと考える、厄介者に過ぎないのです。

NIKKEIの特集「外国人『共生』の実相」から選んで、3回にわたり論点を整理したいと思います。

〇大卒外国人の採用、「高い日本語力」要求が壁に

2021年12月26日 [有料会員限定]

大卒程度の学歴で専門的な技術や知識を持つ外国人の採用に当たり、高い日本語での会話力を求める企業の姿勢が就労の壁になっている。

求人の7割超が最高水準の日本語力を要求するのに対し、レベルを満たす求職者は4割弱にとどまることが26日、民間データの集計で分かった。国は「高度外国人材」として海外から研究者やエンジニアらの呼び込みを図るが、日本語での意思疎通を前提にした採用方針が活躍の機会を失わせている現状が浮かんだ。

米欧では会話力よりも専門性を重視した人材活用が定着している。IT(情報技術)分野などで人手不足が深刻になるなか、企業には成長の担い手を国外からも確保する姿勢が求められる。

企業が専門性のある外国人に求める日本語力をみると、11月下旬時点の求人約1万8千件のうち75%は、国際交流基金などによる日本語能力試験で「幅広い場面で使われる日本語を理解できる」とされる「N1」以上の水準を必要としていた。一方、求職登録した約9千人のうち同水準は37%にとどまった。

日本語力を重視する企業が優秀な外国人材を逃す例は多い。経済産業省は、IT人材が2030年に最大79万人不足すると推計。しかし、日本学生支援機構の19年度調査で、日本で就職したのは留学生の36.9%と、国が目指す5割に届いていない。

明光ネットワークジャパンがアンケートで、外国人採用に消極的とした人事担当者らに理由を複数回答で尋ねると「言語・意思疎通が不安」が48%で最多となった。

日本は職務内容を限定しない「メンバーシップ型」雇用が中心で、必要なスキルの不明確さが日本語力を過度に重視する一因になっている。

〇採用は依然「日本語力」で 意思疎通の不安拭えぬ企業

       外国人「共生」の実相 描けぬキャリア㊤ 2021年12月28日 

国は留学生の国内就職率を5割とする目標を掲げているが、日本学生支援機構の調査によると、希望がかなう人は全体の3割台にとどまる。コミュニケーションへの不安から、多くの企業が依然、高い日本語力を海外人材に求め続けるからだが、外国人ら向けに就職サイトを運営する企業が9月に実施したアンケートでは、来日してからN1の取得まで漢字を常用する中国・台湾出身者で平均2.8年、それ以外が同4.5年の期間を費やしていた。

こうした採用傾向を逆手に取って優秀な社員を獲得しようとする動きもある。

デジタルトランスフォーメーション(DX)への関心の高まりを受け、エンジニアの人材争奪が激しくなるなか、ITベンチャーのSUN(東京・港)は、専門性重視で「日常的な日本語をある程度理解できる」水準のN3以下に狙いを定め、これまでにバングラデシュ人らを採用した。

仲宗根俊平社長は「ベンチャー企業が日本語力の高い外国人を確保するのは難しいが、発想を変えれば優秀な人材にたどり着ける」という。

日本語力を測る〝物差し〟を見直す企業もある。

フリーマーケットアプリ大手のメルカリは外国語の語学力を評価する国際指標を参考に、各職場に求められる日本語力や英語力を判断する独自の評価方法を18年に開発。外国人などの面接で活用している。

担当者は「文法の知識よりも、ビジネスにおいて何ができるかを見極めることこそが重要だ」と指摘する。

行政や企業向けに外国人材受け入れの研修を請け負う内定ブリッジ(東京・千代田)の浅海一郎社長は「どの程度の日本語力が業務に必要か、詳しく分析している企業は少ない」と説明。「言語の壁を越えて外国人を戦力にできるかどうかは日本人側の歩み寄りにかかっている」と話している。

以下は、専門家と担当記者からのコメント

一橋ビジネススクールICSのMBAプログラムは、学生の8割が外国人です。どの学生も日本に高い関心を持って来日しており、日本企業への就職希望者も多いのですが、日本語の壁にぶち当たることが多いです。英語力も国際経験も高い学生ばかりなので、もったいないといつも感じています。韓国や中国では、英語ができれば問題ないと伺うことも増えました。今は翻訳アプリも性能がとても良くなりましたし、デジタルの力をうまく活用するなどで、日本のグローバル化が進むことを期待したいです。

鈴木智子

一橋大学 准教授

言葉によるコミュニケーションは仕事をする上でとても重要ですが、日本の場合は日本語しか話せないからどうしても内向きになりがち。優秀な外国人の採用を通じて日本人社員の英語力を高めようとするくらいの発想の転換が必要かもしれません。世界規模で人材獲得競争が激しくなる中で、「日本語」へのこだわりが競争力低下につながりそうで心配です。外国人材も働く場所を選ぶわけですから、選ばれる企業にならないと。

中村奈都子

日本経済新聞社 編集委員


日本語能力試験のN1というのは、日本語の読み書きがほぼ日本人と同じレベルであることを意味します。記事で、漢字圏以外の外国人がそのレベルに到達するのに、4.5年かかるというデータを挙げていましたが、ここには途中で放棄して帰国してしまった人々が含まれていません。

日本企業が、何故そこまでの日本語レベルを求めるかという点で、「日本は職務内容を限定しないメンバーシップ型雇用が中心で、必要なスキルの不明確さが日本語力を過度に重視する一因になっている」という指摘は重要です。メンバーシップ型というのは、簡単にいえば終身雇用を前提として、組織への忠誠心に比例して昇給させるという制度で、いわば「空気を読む」能力を求めているのです。これでは外国人は、入ってくるなと言っているのに等しいですね。

これに対して、日本以外のほとんど全ての国が、専門的スキルに応じて職位と昇給を決める、ジョブ型を取っていると言われています。大企業の一部で、ようやくジョブ型を採用する企業が出始めていますが、終身雇用の見直しを含めて、雇用される側にも警戒心が強いことが、この日本的企業文化の改革を阻んでいます。

Diversityの所でも述べましたが、今や多様性こそが生産性向上とイノベーションの前提なのに、日本の文化が多様性も、デジタル化も阻んでいると言わざるを得ません。(K)

        共生社会の実現をめざします!

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