日本のデジタル敗戦(その2)

前回のブログで、私は「社会のデジタル化と日本の伝統『文化』とは、相いれない部分が多々ある」と申し上げました。 デジタル文化の「先進国」と日本の差がどこにあるのかを考えるうえで、次の記事が参考になります。

〇日本のデジタル敗戦 Googleから探る「失われた20年」

2021年11月8日

差はどこでついたのか。日本企業にまだ勢いがあった2000年代、当時は新興企業だった米グーグルで働くことを選んだ日本人社員らへの取材から20年に及ぶ「デジタル敗戦」の要因を探った。

徳生氏は同社の競争力の源泉は「個々人が自分で開拓していく」姿勢にあり、それを実践する人材がそろっていたことを指摘する。組織や資金の力で勝負する企業が多かったなか、グーグルは国籍や人種を問わずにすぐにプロジェクトにかかわれるような有能なメンバーをかき集めていた。

賀沢氏が入社後に「一番ショックというか、驚いた」のは「みんなズケズケものを言う」ことだった。役職や年齢、性別は関係ない。フラットな社風は革新を生む原動力でもあった。手軽に使えるメールサービス「Gメール」は現場の社員が発想し、利用者の使い勝手の良さを追い求めて実現した一例だ。

軸となるのは「どうユーザーに価値を与えていくか」(徳生氏)。各自がバラバラに理想を追い求めることを是とするわけではなく、良いものを作れば売れる、という供給者目線とは一線を画す。利用者が求めるものをデータなどから探り、それを実現してきた

近年は日本でも機能の変更や改修を繰り返す「アジャイル開発」の導入が広がるが、少し前まで高品質の「完成品」を提供することを重視する発想が強かった。変化の速い時代に対応できず、機敏に動く米国勢に後れを取る要因になった。

展開の速さに限らない。エンジニアリングディレクターの今泉竜一氏が指摘するのは「ディスカッションして決断をする過程のスピード感」だ。現場から上がるどのアイデアを生かし、どれを捨てるか。技術を熟知した経営層の素早い判断を強みとしてきた。

理由」を並べがちな日本で「世界を変える」と宣言したら笑われかねないが、それを大真面目に追求する姿勢こそが実現へのエンジンとなった。

世界が人工知能(AI)などデジタル技術のイノベーションを競うなか、日本の情報通信産業の研究開発費は低水準のまま伸びず、19年は約5400億円と08年よりむしろ約1割減った。米国の同産業が08年から18年にかけてほぼ2倍の約11兆4000億円に拡大したのとは対照的だ。

日本は製造業偏重の産業構造から抜け出せず、ますます米国とのデジタル競争力の差が開く恐れがある。(AI量子エディター 生川暁)


 「個々人が自分で開拓していく」「みんなズケズケものを言う」「製品やサービスの質より前に『どうユーザーに価値を与えていくか』をまず考える」という文化は、本当に日本に無い文化だと思いませんか? 

 Dignityの前書きのところで、「幸福は与えられるものではなく、自分でつかむものである」というようなことを書きましたが、DigitalもDiversityもDemocracyも、全てこういう気概をもった「個」を前提にしていますし、全てのベクトルは「個」に向いているのです。

 3番目の「ユーザーの価値」というのも、同じ発想だと思います。日本人はビジネスで普段、「価値」というような言葉は余り使ってこなかったような気がします。「品質の良いものを低価格で提供する」というサプライサイドの意識ばかりが強かったですね。企業が市場を支配しており、かつ顧客の志向が単純なときはそれで良かったのですが、ネットビジネスが支配的になり人々の「価値観」が多様化して、事情が大きく変わりました。

 顧客は無限の選択肢の中から、「自分らしさ」とか、「心地よさ」とか、「健康・環境に優しい」とか、そういう個人的な「価値」(つまり生き方、自分でつかむ幸福)を基準に、製品・サービスを簡単に選ぶことができるようになったのです。

 記事の最後にあった、情報通信技術への投資水準の低さは衝撃的です。出展は、文科省の「科学技術指標2021」(報道資料はこちら)です。これにつていは、別のブログで取り上げたいと思いますが、日本の現状を端的に示したグラフを2つ、添付しておきます。

【論点まとめ】

 ❶ デジタル競争力の高い国の社会や企業の「文化」は、「個人の力」「開拓精神」「スピード」「ユーザー視点」といった特徴があるが、日本はこれまで「組織の力」「保守的」「着実」「生産者視点」という、デジタルとは相反する文化が強かった(恐らくこれからも?)

 ❷ 情報技術への研究開発投資は、過去30年間大学部門でも公共部門でも、日本はほぼ横ばい。これに対して中国の激増が際立つが、アメリカとEUも着実に増えている。

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