移民について考える(その1)

日本政府は、「移民」や「移民政策」という言葉を使うことを意識的に避けていますが、2018年3月の政府答弁書では、次のように述べています。

「政府としては、例えば、国民の人口に比して、一定程度の規模の外国人を家族ごと期限を設けることなく受け入れることによって国家を維持していこうとする政策については、専門的、技術的分野の外国人を積極的に受け入れることとする現在の外国人の受入れの在り方とは相容れないため、これを採ることは考えていない。」

しかし、この答弁のおよそ1年後に、事実上の移民政策に舵を切ったと言われている、特定技能制度が始まり、2022年春には、さらにその制度が改正されて、13の産業分野で働く特定技能外国人は、家族を含めて無期限の在留すなわち永住が可能になると見られています。つまり「一定程度の規模の外国人を家族ごと期限を設けることなく受け入れることによって国家を維持していこうとする政策」になると見られるのです。

既に、280万人を超える在留外国人の最も多い部分が永住者です。そしてその人数は、毎年3万人のペースで増え続けているのです。

2021年11月26日の朝日新聞朝刊オピニオン欄に、「移民国家になる日本」というインタビュー記事が載りました。話し手は社会人口学者で国立社会保障・人口問題研究所部長の是川夕氏です。以下その骨子です。

  • 日本はアジア圏内で 最も多くの外国人を集める国である。
  • この4、5年永住者は毎年3万人づつ増え、日本在留の外国人の30%という最大のグループを占めるまでになった。(グラフ参照)
  • 外国人が日本に集まる理由は、メンバーシップ型の雇用慣行にある。他の国と違い、資格や経験がなくとも大学新卒で日本人と同じレールに乗れば、一生職場が保障されるという点が魅力になっている。
  • 永住者は、賃金や出世のカーブが日本人と変わらない。彼らの子供たちの比率は2030年には、同世代の10%になると見込まれている。日本における外国人の社会的統合は進んでいる。
  • IMFの長期シュミレーションによると、日本への移民の流入は、2050年ごろまで高止まりするという。

そして、是川氏は最後に次のように述べています。


「誤解を恐れずに言えば、移民は日本を救うと思います。人口が減る分をすべて補うことはできま せんが、国が縮む時間を遅らせることはできる。それによって、新たな展望が見えると考えます。課題が多いのは確かですが、受け入れをやめるという選択が最もよくありません。彼ら彼女らと共に、問題を解決していくべきです」

「成長するアジアと、各国の若者たちの躍進を考えると、アジアの一国家である日本は、その活力を享受できるポジションにあります。アジアの若者のハブになるチャンスがあるというのに、それに背を向けてしまったら大きな損失になるでしょう」

「日本人は同質性が高くて排他的だという考えは、各種データを見る限り、印象論に過ぎないと思っています。この国は元々、アジアの中でいろいろな人たちが流れ着く海洋国家でした。日本は多様な人々をもっと受け入れることができる国であり、移民国家への道を歩んでいくと思います 。身近に外国ルーツの知人、友人が増えている若い世代の常識がまず変わり、それが社会全体へいくと拡がってゆくと考えています」


「移民」を歓迎する人々にとっては、是川氏の議論はやや楽観論に感じます。そして「移民」の増加を望まない人たちには、悲観論に聞こえます。

 私は「移民」促進論者です。その理由はDiversityの前書きで述べたように、Diverrsityの促進こそが成長と革新を生み、さらには、日本国内の他の多様性の尊重に好ましい影響を与え、Democracyに必要な国民の自律への意識を高めると思うからです。

 一方、外国人の増加によって「日本文化が変質する」「犯罪が増える」という人々の主張に根拠があるとは思いません。1000年単位で歴史を見れば、日本の文化はむしろ外から入ってきた人々によって発展してきたと言えるからです。(ちなみに私の岸という姓や安倍という姓は、1500年くらい前に朝鮮半島から渡ってきた人々に由来すると言われています)

 しかし私は是川氏のようには楽観していません。その理由について次のブログで考えていきたいと思います。(K)

        共生社会の実現をめざします!

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