移民について考える(その3)共生社会への高い壁②

日本において永住外国人の数が年々増え、同化あるいは移民国家への道は進んではいるものの、大きな壁が立ちはだかっている。その第1の例として、企業が外国人にあまりに高い日本語レベルを求めるために、希望する外国人の就職が困難な現実を挙げました。

今回は、日本に生活基盤を定めようにも、日本語教育とりわけ子弟に対する日本語教育のシステムが不十分なため、外国人人材のスキルアップや定着の障害になっているという話を取り上げます。

論点は、

  • 日本語教師の質と量が絶対的に不足している。
  • 地域によって大きなばらつきがある。
  • 教育現場だけでなく医療現場でも、コミュニケーション能力が無いためにサービスから疎外されている外国人がいる。

外国人の日本語指導に地域格差 教員の担当数、最大3倍

2021年9月14日 [有料会員限定]

外国籍の子どもらに日本語を教える体制に偏りが生じている。外国人が多く住む自治体の間で、日本語指導の担当教員1人が受け持つ子の数に最大3倍の差があることが日本経済新聞が入手した国の資料で判明した。教員不足で指導が行き届かない地域もある。外国人との共生の担い手となる子どもが十分な教育を受けられる環境の整備は急務だ。

文部科学省によると、日本語の授業が必要な外国籍の子らは全国の公立小中学校に2020年5月1日時点で約3万8千人いた。日本語の指導は所属するクラスとは別の教室で行うため、担当の教員が追加で必要になる。

同省は全都道府県と政令市の67自治体に担当教員を約2千人配置している。各都道府県・政令市に日本語指導が必要な子が平均で566人ずつおり、教員1人が18人を受け持つ計算だが、配置人数はばらつきがある

同省が67自治体の状況をまとめた資料によると、19自治体で教員1人が受け持つ子が平均の18人より多い一方、22自治体で10人を下回った。日本語指導が必要な子が平均(566人)より多い13都府県と5政令市をみると、教員1人の受け持ち人数が最も少ないのは東京都と栃木県で11人。最多の千葉県は32人で約3倍の差がついた。

受け持ちが多ければ細かい指導は難しい。

千葉県船橋市は日本語指導が必要な子が200人以上いるが、担当教員は5人しかいない。教員がいない学校に通う子は教員免許を持たない外部の指導者に頼ったり携帯翻訳機を使って授業を受けたりしている。

地域差の主因は財源不足だ。

同省は20年度、約900人の教員を日本語指導が必要な児童生徒45人につき1人の割合で各都道府県・政令市に割り振った。その上で、残りの約1100人を自治体の申請に基づいて配置する仕組みにしている。公立小中の教員給与は国と都道府県・政令市が分担し、担当教員を増やせば県などの財政支出が膨らむ。国が割り振った最低限の人数以上の申請をしない自治体も複数ある。県の独自予算で追加配置する自治体もあるが、千葉県は「財源が限られている」として行っていない。

文科省によると、日本語の授業が必要な外国籍の小中学生らは26年度に4万人を超えると推計される。外国籍の子どもが能力を十分に生かせる環境が整わなければ、企業がグローバル展開するうえで必要な優秀な海外人材の受け入れや定着は進まない。

海外は先行する。

移民を積極的に受け入れ、人口増を経済成長につなげてきたオーストラリアでは、在籍する児童生徒の使用言語などの情報の州教育省への提出が学校に義務付けられている。主な州では移民の子どもが一定数いる学校に英語教育の専門資格を持つ教員を配置している。

フランスや韓国なども移民の子どもへの公用語の教育は1クラス10人程度で実施され、各国最低でも週10~20コマ程度の授業を受けられる。

教員の質の確保も課題だ。日本語指導専門の教員免許はなく、家庭科など国語以外の教科の教員が教える例も目立つ。各国は教員に専門の免許を求めたり、教職課程で公用語教育を必修科目にしたりしている。

共生政策、看板倒れに

(外国人支援が企業価値を高める 地方からの挑戦 編集委員 水野裕司より抜粋)2021年6月11日

政府は19年4月に新しい在留資格「特定技能」を創設した際に、生活支援を中心とした「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」をまとめ、改定を重ねてきた。しかし、支援項目は多彩なものの実行のスピードが遅く、「共生」は看板倒れになっている。

外国人が日本で生活するうえでとりわけ大切な日本語の学習支援には課題が山積している。現在、日本語教育は地域のボランティアらに頼っているのが実情で、教える人の技量によって内容やレベルのばらつきが大きい。

このため政府は総合的対応策で、日本語教師の資質や能力を証明する資格制度の整備を掲げた。自前で外国人従業員に日本語を教える企業にとって助けになるが、その具体化はこれからだ。制度の中身を早急に詰めていく必要がある。

外国人からの相談に応じ、助言する専門性を備えた人材の育成も急ぐ必要がある。小中学校に通う年齢になっていながら、就学していない外国人の子どもが多い実態も浮かび上がっている。政府と自治体の緊密な連携による対策が欠かせない。外国人患者と病院の仲立ちをする医療通訳者の養成も急がれる

政府による共生策が進展すれば、企業は外国人支援にメリハリをつけて取り組める。たとえば能力開発だ。どんな仕事をどのような順番で経験させれば技能向上に効果的か考え、計画的に外国人従業員の能力を底上げできるようになるだろう。

コロナ禍が一段落し、国内需要の回復が加速すれば、人口減少下の日本では外国人労働者に頼らざるを得ない実態が再び顕在化する。

1990年に日系人の在留許可条件を緩和した後も、政府は外国人への生活支援を事実上、自治体任せにしてきた。外国人を「労働力」としか見ず、「生活者」ととらえない傾向があった。その姿勢の転換がいよいよ求められる。


外国人の日本社会への定着を図るための、国としての投資が圧倒的に不足していると感じます。背景にある根本的問題として、やはり政府が「移民政策」を表向き否定していることがあります。「共生」というのは、政策目標としては情緒的で曖昧すぎると思います。なんだか国民に道徳を押し付けているようで偽善的です。出入国在留管理庁を英語で表記すれば Immigration Bureau of Japan ですが、素直に訳せば、日本移民庁ですよ。

政治も行政も、もう建前と本音を使い分けるのではなく、タブーを作るのではなく、真正面から移民の必要性を認め、移民の流入と定着を促進する投資を行うべきです。難民を無制限に受け入れというのとは、問題が違うのですから。(K)

        共生社会の実現をめざします!

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