日本の停滞の原因を探る(その2)

30年に及ぶ「日本の停滞」を、前回では、1人当たりの年収が400万円以下でほとんど横這いであることと(OECD統計)、世界競争力年鑑2020年版(IMD)に見る、日本の競争力の継続的な低下と定義しました。

ここからは、この停滞をもたらした原因を考えていきます。

仮説1:設備投資の停滞 (その原因)リスクを避ける経営者

キャッシュの山、不都合な真実 「死んだ資本」うずたかく

 2021年9月19日 5:30 [有料会員限定]

企業の手元にある現預金は259兆円。名目国内総生産(GDP)比では48%にのぼる。80年度は27%だったが、リーマン・ショックがあった08年度以降は一貫して上昇。

日銀の資金循環統計によると、日本の企業部門は20年以上も資金余剰が続いている

米コンサルティング会社、ウイリス・タワーズワトソンが売上高1兆円以上の大企業の最高8経営責任者(CEO)の報酬体系を調べたところ、米国は株式報酬などが中央値で74%、ドイツは41%に達した。日本は27%にとどまり、資本効率を高めて株価を上げたいというインセンティブが働きにくい。利益を生まない「死んだ資本」が放置されやすいのだ。

「現預金は成長投資や還元に回らなければ『死んだ資本』にすぎない」

コロナ下で米アメリカン航空はフルタイム従業員を3万人以上も減らしたが、ANAホールディングスの従業員はほぼ不変。客室乗務員を家電量販店や自治体に出向させるなど手を尽くして雇用を守ったからだ。日本は正社員の解雇規制が厳しく、リストラに対する社会的批判も大きい。危機下の雇用維持のためキャッシュを持っておきたい経営者が多い。


これは大変興味深い指摘です。1番上のグラフは、リーマンショック以降、企業が社内留保とりわけその中でも現金、預金を継続して増やしていることを示しています。

これと、日本人の平均収入が増えていないことと合わせると、明らかに、労働分配率は低下していると言えます。

しかし、だからと言って、経営者の所得が増えているわけではないことを、真ん中の棒グラフが示しています。これは時系列のデータではありませんが、2020年時点で、日本人経営者の平均報酬は2.5億円程度。アメリカの6分の1、フランスの半分以下で、しかも内訳が現金に偏っているので、記事は、「資本効率を高めて株価を上げたいというインセンティブが働きにくい。利益を生まない「死んだ資本」が放置されやすい」と指摘しています。従って、経営者の報酬も、この間、余り上昇していないでしょう。

記事では、日本企業が利益を出しても、それを成長につながる投資に回さず、現預金で蓄え続ける理由について、「危機下の雇用維持のためキャッシュを持っておきたい」からだとしています。実際、「上場企業はコロナ下の21年3月期に借入金などで18兆6500億円を調達する一方、現預金などを20兆5400億円増やした。コロナという不測の事態の中で差し引き2兆円近いキャッシュをため込んだ」そうです。

次のグラフはそのことを明確に示しています。過去10年間、企業の経常利益は上昇の一途をたどりましたが、設備投資はほとんど増えていないのです。つまりキャッチュを溜め込んだのです。企業経営者たちのこの保守性というか、消極性はいったいどこから来ているのでしょう?このシリーズの大きなテーマとして考えていきたいと思います。(K)

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